やまぎ日報435「ロックに出会ってしまったから」

4月28日

昼から中目黒の古巣スタジオでレコーディング。スタジオの入り時間を「昼過ぎくらい」という沖縄みたいなタイム感で設定したところ、集合時間に最大2時間半のバラつきが生じた。実にゆるい。

集合はのんびりだが、録り始めたら早い。小倉くんはだいたい1、2回しか叩かない。お前はYAZAWAか。

私と小倉とハルさんとエンジニアの阿部さんの4人だけのミニマムなレコーディング。ハルさんがディレクションまでやってくれて、細かい作業が苦手な私は実に助かる。2日間スタジオを押さえてはいたが、「今日録れるもの録っちゃって明日は休みでよくね?」的な空気が流れ始め、私の歌まで録り切って見事みんなで休日を勝ち取った。

「そもそも最初から1日でよかったじゃん」という冷静な異論は誰も口にしなかった。いいメンバーである。アルバムを今年は出すと言い続けて3年。今年こそは出す。

 

4月29日

急な休み。「シフトに入れ…シフトに入れ…」と社畜の山岸が耳元で囁いたが、振り払って私は表参道へ。買い物するのだと息巻いたが、日用品のみ買ってブラブラして帰ってきた。休みにはなったがラジオを録る必要があったので結局小倉くんとファミレスで待ち合わせ、一緒にパフェを食べた。

悪くない休日であった。

 

4月30日

夕方からシフトイン。新人研修。出勤して初めて今日が平日だと知る。休日の空気を纏って出勤した自分がなんだか恥ずい。

 

5月1日

渋谷で久しぶりの弾き語り。おおちゃんと金廣くんが呼んでくれて、クレストに同世代の懐かしい面々が集まった。お客さんも同世代の方が多いのかなと空気を読んだ結果、私のMCは「今日はそんなに若い人はいないと思いますが」「リアルタイムで恋とかしている人はいないと思うんですが」と、気がつけば綾小路きみまろの漫談のようなMCになってしまった。猛省。

今回は2つの会場で演者が代わりばんこに演奏する形式だったので、お客さんがその都度移動するスタイル。私がこの日最もプロとして自分に酔った瞬間は、お客さんのスムーズな移動時間を考慮して自分のステージを2分巻いて終わらせようと決意し、最後の曲をステージ袖のデジタル時計を見ながら曲のテンポと尺を調整しつつ演奏、見事にジャスト2分巻きで終わらせた瞬間であった。それをさらっと黙ってやったらかっこいいのに、「2分巻きました〜!」とステージでマイクを通して宣言し、いい人アピールをしてしまうのが私。


イベントの性質上当たり前だけど、ボーカルだらけでなんかこわい。

この日、最近は夜勤でもあまり会わなくなったカザマくんから急に「やまぎさんに会いたいので今日行っていいですか?」と、彼女だったらキュン死するような連絡が来て会いに来てくれた。ライブハウスのドリンクバーで立ち飲みをしながら、ライブとは関係のない職場のシフトの話とスピリチュアルな話をした。いい夜だった。

 

5月2日

GWの合間の平日でしかも大雨。どこ行っても激混みの連休中にこの日だけはどこも空いていると踏んで、早起きして遠出をした。推しの芸術家の先生が野外イベントで出店をしていて、作品を購入した。私は雨対策で直前に急遽ワークマンで購入したカッパを着用していたのだが、ふと見ると芸術家先生もまったく同じものを着ているではないか。お互い気づいているような気づいていないような。推しと服が被るという貴重な気まずい体験をした。

 

5月3日

昼からシフトインして5時間働き、シフトアップするや否や人数が足りない病院の夜勤に駆けつける。2つの職場を行き来し穴を埋める社畜のGW。この度病院の電子カルテシステムがすべて入れ替わり、勤続20年以上を誇る大ベテランの私が一気に新人以下となってしまった。「当直の子たちはなんとかなるでしょ」的な雑な研修しか受けずに本番環境にぶち込まれた我々夜勤部隊であるが、筋金入りのゲーマーやオタクを擁する少数精鋭のいわば別班である。いろいろいじりながら本当になんとかなってしまっている。普段は若干見下している同僚たちが、ハリウッド映画でFBIにスカウトされるハッカーの少年のようにかっこよく見えた。

 

5月4日

吉祥寺で毎度のレンガフェス。私たちはトリ。リハもないので出番直前に行ってもかまわないのだが、私はオープンから会場入りする真面目さ。行ってみたら小倉もいた。真面目か。

昼からのイベントのため、私たちの出番の頃には客席にはいい具合に完成された酔っぱらいがチラホラ。実に楽しかった。

最近プラケーでは我々がトリになる機会が増えた。私がプラケーの株主になったからとMCでネタにしていたが、冷静に考えるとトリが多くなったのはハルさんに入ってもらってからな気がする。もしかしたら本当の大株主はハルさんなのかもしれない。


終演後、帰ろうとする町田さんのバッグからミニ四駆が飛び出していて、思わず職質の警察官のように引き留めてしまった。「あんたどこまで少年なんだ」と。進さんと3人でミニ四駆談義で盛り上がった。考えてみたら、ロックに出会ってしまった時から私たちはずっと少年なのだ。

ロックに出会ってしまったから。すべての言い訳に使える気がしてきた。遅延理由、聴取漏れ、会計取りこぼし、ダブルブッキング。すべてはロックに出会ってしまったから。私が雇用主ならクビにする。