やまぎ日報146

2月9日

吉祥寺でレコ発番外編のトークイベント。朝9時入り。ロンドン、風間くん、青江くんという非常に濃い友達が参加してくれ、大いに語ってくれた。トーク後のスペシャルライブでは3人が1曲ずつウラニーノの曲を歌ってくれた。これがまた素晴らしく、それぞれにぴったりな選曲でそれぞれの味が出ていた。

最後に「中年花火」で新たな試みを。


打ち合わせ一切なし。3人のおっさんが「ただステージにいる」という表現、これはもはや現代アート。アングラ劇場で上演される前衛パフォーマンス集団の演目のようだった。ただ、どちらかというと泣ける曲のつもりで作ったのだけど、客席はみんな震えながら笑っていた。この日来てくれたお客さんだから受け入れてくれたと思う。いろいろな意味で。

夜のイベントもあったので追われるようにライブハウスを出て、磯丸水産で15時には乾杯していた。そのまま21時過ぎまでひたすら飲み続け、会計時にはレシートが絵巻物のように長くなっていた。本当にこのメンバー大好き。幸せな1日だった。

 

2月10日

夜勤。

2月11日

いろいろたまった仕事を片付け、夜にはなぜか思い立って一人で天ぷらを揚げて食べる。

2月12日

新しい職場の研修が続く。みんないい人だ。しかし頭はパンク寸前。

2月13日

引き続き研修。パイセンが行方不明との報を聞く。どこかで無事でいてくれればいい。帰ってきた時になんて声をかけようか、それだけをずっとシミュレーションしながら酒を飲み、眠る。

2月14日

研修中に情報が随時届く。携帯は鳴り続けるが、最悪の結果をどうしても否定したいぼくは誰からの情報も信じたくない。研修から夜勤に向かう電車で真実を知る。信じられないし受け入れられない。一晩受付で泣き明かす。

2月15日

風間くんが昼のライブ終わりで家に来る。お互い一人でいるのは辛すぎる。二人でひたすら泣きながら酒を飲む。どんなに飲んでも全部涙になって出ていく気がした。辛すぎるからパイセンの悪口を言おうと決めて話してみても、一つも出てこなくてまた泣く。薄暗くなっていく部屋でひたすら泣き、ひたすら飲む。思い返せばこの日がぼくたちの本当のお通夜だったと思う。そして酒も抜け切らないまま夜勤へ。パイセンが入る予定だったシフトに代わりに入る。

2月16日

帰っても何もできず、気がつけば夕方。3連勤目の夜勤へと向かう。同僚が熊谷駅までパイセンが夜勤中によく飲んでいた缶コーヒーを届けに行ってきたと聞く。夜中にデカビタを飲む。ぼくが疲れているとパイセンがよく買ってきてくれたデカビタ。うまいと言いながら2人で飲んだデカビタを、1人で飲む。ずっと長い1日が続いている気がする。悪夢を見続けているようだ。

2月17日

パイセンのお通夜。実感がない。目の前で行われていることが全部嘘にしか思えない。お通夜が終わり、やっとパイセンに会えた。もっと早く会いに来たかったけどパイセンの代わりに夜勤入ってて来れなかったよ。やっと会えたよ。泣き崩れて小倉に連れ出される。風間くんと斎場の近くの飲み屋で飲む。飲んだ後、パイセンに会いたくなり、深夜の真っ暗な斎場に二人で忍び込む。パイセンはいなかった。斎場を後にしてホテルまでぶらぶら歩きながら、ふと、風間くんと歩いたこの道とこの光景をぼくは一生忘れないんだろうなと思った。ホテルの部屋でまた飲む。ずっと風間くんといる。やっぱり一人でいるのは辛すぎるから。久しぶりに深く眠る。

2月18日

パイセンの告別式。昨日の雨は上がって快晴。パイセンの新曲が流れている。パイセンの棺に花を入れる。泣き崩れて何も言えないぼくの隣で風間くんがご両親に「パイセンを育ててくれてありがとうございました」と穏やかに言った。出棺。親族の方に紛れてマイクロバスに乗り込み、火葬場へ。ぼんやりとパイセンが灰になるのを待つ。風間くんとお箸を持って二人でパイセンの骨を拾う。こないだ3人で歌ってたのに、なんで今風間くんとパイセンの骨を拾っているんだろう。ご家族に挨拶をして、風間くんと太田哲宇さんと3人で湘南新宿ラインのグリーン車で酒を飲みながら帰る。こわい。明日から日常が始まるのがこわい。パイセンがいない日常が始まるのがただただこわい。帰って飲んで眠る。