ウラニーノを応援してくださる皆様、いつもありがとうございます。ちょっと長くなりますが、読んでくれたらうれしいです。
数年前から、歌うこと、声を出すことに違和感を感じるようになりました。それまで何も考えずに当たり前に出していた自分の声が、思うように出せなくなってきました。おかしいなと思って専門の先生に診てもらいましたが、声帯に異常はなく、むしろ非常に健康な声帯とのことでした。ならば歌い方がおかしくなってしまったのかと、ボイストレーニングの先生のところに通い始め、姿勢、呼吸法といった基礎的な部分を見直しました。一時期調子は戻ったものの、ツアーやレコーディングが続く中で再び崩れ始め、「違和感」はどんどん大きくなっていきました。それにつれて、ステージに立つ前の恐怖感、うまく歌えなかった時の絶望感もまた、大きくなっていきました。
何かがおかしい、けど原因がわからない。整体、気功、漢方、いろいろ試しました。精神的なものかと思って心療内科に行って抗不安剤とやらも飲んでみました。あと、ライブ前にお酒も飲んでみました(陽気になって終わった)。とにかくすがる思いで試せるものは何でも試しました。しかしどれも一時的な気休めにはなっても、根本的な解決には至りませんでした。思い通りに動いてくれない自分の身体がもどかしくて憎らしくて情けなくて、ライブハウスやスタジオを抜け出して何度も悔し涙を流しました。
そんな折、あるお医者さんに出会いました。有名な歌手や役者さんの治療も多数行っているその先生に症状を話したところ、職業性ジストニアの一種と診断されました。ジストニアとは筋肉の一部が意思と関係なく特殊な動きや痙攣を起こしてしまう病気ですが、これに機能性ジストニアといって、ある動作を行う時にだけ一部の筋肉にそのような症状が現れることがあるそうです。例えば字を書く時にだけ指に変な力が入ってしまって書けなかったり、スポーツ選手が原因不明のスランプに陥るイップスもこれにあたります。ピアニストやギタリストが急に指が動かなくなってしまったり、しばしばプロの演奏家も苦しめる特殊な症状だそうです。先生曰く、ボーカリストにも間違いなくこの症例は当てはまるとのことで、事実、先生も何人か同様のボーカリストを見てきたとのこと。不思議なもので、その話を先生に聞いたときのぼくは、自分がその障害に苦しめられることになってしまった不運を嘆くよりも、誰にも理解してもらえなかった自分の身体の現状を説明してもらえたということの喜びの方が大きかったのを覚えています。「辛かったでしょうね」と先生に言ってもらえたとき、数年に渡る苦しみを思い、思わず涙があふれました。
なんだか重くなってしまってすみません。そういうわけで、今は先生の下でリハビリに取り組んでいます。悪い癖がついてしまった自分の身体を、少しずつ治していく作業です。「あー」とか「えー」とかをひたすら出すという非常に地味な練習です。近所の人に「あいつ、ホーミーでも始めたのか?」と思われてそうです。長い道のりかもしれないけど、今は希望を持って取り組んでいます。何度もくじけそうになったけど、まだまだ歌いたい歌もやりたいこともたくさんあるから。曲ができない、売れない、同じ境遇のミュージシャンが抱えるそんな悩みとは一線を画すもっと根源の問題、「普通に歌いたい」「普通に声を出したい」、そんな大きな荷物を背負うことになってしまいましたが、神様は乗り越えられる試練しか与えないんだと信じて、なんとしても声を取り戻します。そして、当たり前に見ていた光景を、またこの目で見たいです。
ご心配をおかけして本当にすみません。いつもライブに来てくれる皆さん、ウラニーノを応援してくれる皆さんがいてくれることが、ぼくにとって何よりも支えです。あとぐら、はるかちゃん、サポートのみんな、バンド仲間、友達、家族、事務所の人!こんなぼくをいつも支えてくれてありがとうございます。ウラニーノに関わってくれるすべての人に、「私、がんばりますので」という決意を込めて、今回こういう形で書かせてもらいました。
そんなわけでウラニーノは今ちょっと謎の冬眠期間に入っていますが、リハビリと製作期間です。曲、シコシコと作ってます。春くらいにはまた皆さんの前に立ちたいなって、思っています。復活ワンマン!とか大袈裟なことにはならず、人のイベントでぬるっと再開したりするかもしれませんが、その時はそれもウラニーノらしいと笑ってください。けど新しいCDも出したいし、ツアーも行きたいし、久しぶりに大きなところでワンマンもしたいです。まだまだ旅の途中です。これからも、どうかよろしくお願いします。嗚呼、すいません。
読んでくれてありがとうございました!